最大の武器

抗てんかん剤は、アルビアチンが一般的です。次いでバルプロ酸ナトリウム(デパケン)、カルマバゼピンといった薬があります。精神運動発作には、カルマバゼピン(テグレトトル)が一番効果的です。てんかんも、抗てんかん剤でかなり抑えられ、治療には薬は大変重要です。抗てんかん剤は小児てんかん、部分てんかん、全般性てんかん、精神運動性てんかん(側頭葉てんかん)といった分類ごとに使う薬が異なってきますので、脳波をきちんと調べ、発作型を明らかにする必要があります。一般に、精神科の治療というものは、特別に精神分析をしたり、集団療法、あるいは絵画療といったように、やたらなんとか療法という名前がつくような治療をすると思われているようです。しかし、実際の治療場面で重要なのは特別な療法ではなく、治療者の人となりや正確な見たて、治療上の知識やセンスが、最大の武器であることは心得ておいたほうがいいでしよう。

 

 

そのことを抜きに精神科の治療を語ることは、ほとんど無意味なのです。しかし、専門家の間でも相も変わらず、精神分析とは、心理療法とは、集団療法とは、といかにも専門家の言葉で論じられています。それはもちろん重要だとしても、前提にあるその治療者人となりを考慮しない療法は意味をなしません。そしてまた、治療者―患者間の関係において、ウマが合うかどうかが重要です。気が合わないのに患者さんのほうが治療者に気を使い過ぎたり、気持ちが気楽に打ち明けられないとしたら、意味のない治療であり、カウンセリングです。どうしてもウマが合わないなら、自分で治療者を替える権利があることを知っておくべきです。心理療法について考えてみたときに、精神分析に向いた患者はどのくらいいるかといいますと、せいぜい一〇人から二〇人中一人くらいでしょう。また、近ごろ盛んになっているユング派の治療に向いている人は、私の推定では、五、六〇人に一人くらいの割合ではないでしょうか。そうなると、精神分析や分析治療は、普遍的な治療なのかどうか疑間になってきます。

 

 

しかし、このような治療法がたくさん紹介され、あたかも、すべての患者に、それによってのみ治るかのように誤解されているとしたら、それは大きな問題です。単純な推定でも、精神分析とユング派の分析治療で治せる患者は、せいぜい一〇人に一人くらいの割合だということになります。あとの九人はどうなるのでしょう。すなわち九〇%の患者にはいかなる治療をするのかということになります。実際、九〇%以上の患者さんには折衷的治療をなっているのです。さらに教育、助言、相談という当たり前の話し合いも、多くの患者と医者の間で行なわれています。これがふつうの精神科の実際であって、精神分析やユング派の分析治療のみが行なわれている病院の外来は、日本ではほとんど見られません。